セクハラをするのはどんな人間か知りたくて『壊れる男たち』を読みました。
先日に読んだ本が、女性からみた性暴力についての話でした。
それを読んで関心を持ったのが、「加害者の心理」とはどのようなものなのか、ということです。
自分が所属していた企業においてもいわゆるセクハラ問題というものが起きたことがあり、ハラスメント講習会を業務で担当したことがあります。
教育業界にずっと私はいますが、残念なことに教育業界はこういった性に関する問題が非常に多い業界と言われます。
なんでそんなことをしてしまうのか、どうしたら防げるのかということのヒントになればと思い、『壊れる男たち -セクハラはなぜ繰り返されるのか-』という本を読みました。
この本には、セクハラだと告発された側の男性の言い分がどのようなものかまとまっています。
「合意だったはず」「自然のなりゆきで」―告発されて「加害者」となった男性たちは、事態を理解できず、相変わらずの言い訳を口にすると茫然と立ち尽くす。彼らはなぜ自らの加害性に無自覚なのだろうか。相談現場で接した多くの当事者の声を通して、「セクハラをする男たち」の意識のありようを探るノンフィクション。
一つ一つの事例は非常に腹立たしい不愉快なものばかりですが、どの事例においても加害者男性は被害というものを非常に軽くみているのが驚きです。
セクハラというものは「女性問題」ではなく「男性問題」であると筆者は主張しますが、まさにその通りで原因を女性に求めるべきものではありません。
5つの事例が載っていますが、共通して加害者にあるのが「自分に都合のよい思い込み」。
職場での優位性を用いながらも「フラットな関係の男女の駆け引き」と認識していることが多いようです。
私が社内で相談された事例では、社員がアルバイトの女子大生に対して、業務に関わることを匂わせつつ食事などにしつこく誘う、というものがありました。
当該社員と話をしたところ、「お友達という感覚で誘っていた」とのこと。
アホかと思いましたが、上の立場の人間はその感覚に麻痺しやすいということは多くあることかもしれません。
筆者によれば、前提として凝り固まった「性的役割意識」があり、日常の不安や苛立ちがハラスメントとして噴出するとのこと。
結論を先回りして言えば、職場で加害者をパワハラやセクハラに駆り立てるものの正体は、男たちが抱えた危機感や閉塞感である。(P210)
これについては簡単に賛成はできません。
筆者は社会構造の変化によって男性優位が崩れたために男性は危機感を感じ、それがパワハラやセクハラに繋がっていると分析していますが、優位性の喪失をあまり実感することがない若い世代もセクハラを行う(先の私がみた事例も、新卒2年目の社員が起こした問題でした)ことがあります。
ただ、強固な「性的役割意識」が根底にあるのは間違いなく、そういった意識を持った人間に対しセクハラがダメですよ、ということをいくら言おうと、そこで例示された事例と同様のことだけを防止することになり、そこに例示されないようなことは平気で行いかねないと感じます。
セクハラはダメだと伝えるだけではなく、まずジェンダーについての理解を深める方がこういったハラスメントをなくすためには効果的なのかもしれません。